東灘区の図書館で借りた本です。
著者の二部治身(にべはるみ)さんは、
・世の中が便利になって、失ったものは大きい。
・人間にとって大切な、植物、動物といったほかの命をもらって生きるという生命の成り立ちや重要さを意識することがこのままではどんどんなくなってしまう。
・日々の生活をほんの十年前の当たり前に戻すことで、何かが変わるかもしれない。
・便利で楽なものが世の中に満ちているのに、完全に昔の生活をすることはないけれど、食と住の分野については、ちょっと不便にこだわってみたい。
・この本が、当たり前の生活をもう一度見直すきっかけになれば嬉しい。
という思いで、この本を執筆されたようです。
これまでにも何冊もの本を出版されているようですが、私は今回初めて二部さんを知りました。
「摺る」「干す」「漬ける」といった、昔からの日本の調理の知恵、「研ぐ」「担ぐ」「被る」「縫う」「巻く」といった日本の道具の知恵、「拭く」「洗う」「掃く」といった清掃の知恵、「灯す」「活ける」「飾る」といった季節を楽しみ生活に彩りを添える知恵などが素敵な写真と共に紹介されています。
中でも私の心に響いたのは、この一文。
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よく台所を常にきれいにしておきたい人や、収納、収納って片付けることばかり気にしている人がいるけれど、私の台所はものであふれかえっていたり、いつもなにかが働いている。
ガスレンジには煮物が入った鍋がコトコトいってたり、流しの桶にはアク抜きするためにゴボウが水に浸かっていたり。
手間ひまかけて、料理をつくることのほうが大切で、自分が仕事しやすいようになっていればいい。もちろん、気持ちよく台所仕事をするためには、いつもきれいにしておくことも大切だけれど、休みなく働いている台所はこんなものだと思う。
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雑誌に載っているような、モデルルームのような、何も置いていないピカピカの台所に理由も分からず憧れる気持ちを持っていた私ですが、この本を読んでからは、いつも気持ちよく台所仕事ができるような「働いている台所」を目指そうと思いました。