ここ1年ほど、なかなか本を読む時間が持てなかったのですが、最近はできるだけ時間を見つけては本を読むようにしています。
一番最近読んだのは、
映画化、
ドラマ化もされた話題作、角田 光代さんの「
八日目の蝉 (中公文庫)」。
<内容>
逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるのだろうか。
理性をゆるがす愛があり、罪にもそそぐ光があった。
角田光代が全力で挑む長篇サスペンス。
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生後まもない赤ちゃんを誘拐し、赤ちゃんとの逃亡生活を送ることになった主人公。
誘拐はもちろん犯罪なのですが、主人公には同時期に不倫相手との子どもを中絶し、二度と赤ちゃんを授かることができない身体になってしまった事情がありました。
一目顔を見るだけ、と不倫相手の留守中に家宅侵入したのですが、自分を見て笑った赤ちゃんへの愛しさが募り、赤ちゃんを一人残して出かける両親に対し、「私なら一人ぼっちにしない。私が守ってあげる」と、赤ちゃんを連れだしてしまいます。
手荷物と所持金だけで、赤ちゃんが病気になっても保険も使えず、仕事も定職には就けません。
普通に考えれば捕まりそうなものですが、運にも恵まれ、何よりも、2人を助ける多くの女性たちによって、赤ちゃんと主人公は2人は生きていきます。
捜査の手を逃れながら、滞在先を変えながら。
主人公の赤ちゃんへの愛情は、誰が見ても、本物の母親と同じように見えます。
一方、赤ちゃんを産んだ母親は、家事が苦手で、数年後に主人公が捕まり、成長した赤ちゃんが戻ってきても、上手に愛情を伝えるどころか、お世話もままならない人物。
(主人公と1つ年下の妹に対して、食事を作らない、子どもを置いて夜は遊びに行ってしまう、など、育児放棄にも近い状態です。子ども達の前でヒステリックになったり、子どもに言ってはならないことを平気で口にする人物です。)
赤ちゃんの父親は、主人公と不倫しつつ、主人公や妻、娘たちに対して何一つ責任をとることもできず、関わることを避ける人。
―母親とは。
―父親とは。
―家族とは。
そうしたテーマを主人公の視点と、成長して20歳になった赤ちゃんの視点から描かれています。
「産みの親より育ての親」という言葉がありますが、私は主人公の愛情は本物だと感じました。
面白くて、一気に読んでしまった作品です。